シード・アーリー・ミドル・レイター — スタートアップの「フェーズ」の見分け方
- スタートアップは同じ言葉でもフェーズで仕事が真逆。シード期の事業開発は1人目の営業、ミドル期の事業開発はチーム運営を指します。
- フェーズは調達ラウンド(シード/シリーズA/B/C)と人数(10人・30人・100人)の2つで、面接前でもおおよそ見分けられます。
- 年収が下がっても裁量とSOを取るならシード、生活の下限を守りつつ伸びに乗るならアーリー〜ミドルが目安です。
「スタートアップって、結局どこも同じような環境なんじゃないんですか」——面談でこう聞かれるたびに、僕は「いえ、10人の会社と100人の会社は、別の職業だと思ってください」とお答えしています。
皆さんは、気になっている会社が「いま、どのフェーズにいるか」を言えますか。ここを外すと、どれだけ会社の事業が魅力的でも、入ってから「思っていた仕事と違う」が起きます。今日は、その見分け方の話です。
0. なぜフェーズが「隠れた主役」なのか
スタートアップの求人は、フェーズという文脈を省いて書かれています。「裁量があります」「成長できます」——どのフェーズでも書ける言葉だからこそ、求人票だけでは実態が読めない。会社選びの精度は、事業の良し悪しより先に、フェーズと自分の型が噛み合っているかで決まります。僕が社内で「フェーズ・フィット」と呼んでいる考え方です。
1. 4つのフェーズ — 別の職業だと思う
1-1. シード(〜10人)
プロダクトが立ち上がるかどうかの段階。1人が営業もCSも採用もやります。裁量は最大、リスクも最大。ここで輝くのは、正解のない中で自分で決めて動ける「ゼロイチ開拓者」型です。
1-2. アーリー(10〜30人)
プロダクトが売れ始め、再現性を作りにいく段階。シリーズAの調達を終えた会社が多い。1人目の仕組み化人材、2人目の営業、初めての専任デザイナーが入り始めます。
1-3. ミドル(30〜100人)
組織が伸び、仕組みで回す段階。ここでの主役は、属人業務を仕組みに変える「仕組み化ドライバー」型と、急拡大を支える一人目人事・経理などの「コーポレート基盤」型です。
1-4. レイター(100人〜)
IPOやその先を見据える段階。内部統制、労務、法務など、専門性の高い守りの機能の需要が一気に増えます。大企業で守りを担ってきた人が、経験をそのまま活かせるフェーズです。
2. フェーズを外から見分ける2つの物差し
面接に行く前でも、フェーズはおおよそ推測できます。使う物差しは2つだけです。
- 調達ラウンド:シード→シリーズA→B→Cと進むほど後期。プレスリリースやニュースで「シリーズAで◯億円調達」と出ていれば、アーリー〜ミドルの入口だと読めます。
- 人数:採用ページの社員数や、会社紹介の「メンバー数」。10人・30人・100人のどのあたりかで、上の4分類にほぼ当てはまります。
この2つを、応募前に必ず確認する。これだけで「シード期だと思ったらミドルだった」という読み違いは、ほとんど防げます。
3. 自分の型 × フェーズ — 噛み合わせの表
下は、型とフェーズの噛み合わせの目安です。当メディア独自ガイドの目安であり、統計値ではありません。
| あなたの志向 | 向くフェーズ | 理由 |
|---|---|---|
| 裁量最大・アップサイド重視 | シード | 1人で作る世界。SO込みで設計 |
| 伸びに乗りたい・下限は守る | アーリー〜ミドル | 売れ始めた事業を仕組みで伸ばす |
| 専門性で支えたい・安定も要る | ミドル〜レイター | 守りの機能の需要が大きい |
率直に言うと、シード期は誰にでも勧められるものではありません。年収が一時的に下がり、成果が出るまで時間がかかる。逆に、安定を求める人がミドル〜レイターを選ぶのは、まったく後ろ向きな選択ではなく、むしろ賢い噛み合わせです。
4. よくある失敗 — 「勢い」でシードに入る
僕の周囲の実感で言うと、いちばん多い後悔は「スタートアップに憧れて、いきなりシード期に飛び込んで消耗する」パターンです。カオスが好きでない人がシードに入ると、仕組みのなさに疲れてしまう。反対に、整えるのが得意な人がシードに入ると、まだ整える段階でないのに動いて摩擦を生みます。フェーズは、憧れではなく、自分の型で選ぶものです。
5. 実務パート — 気になる3社をフェーズで並べる
今日やれることを置いておきます。所要時間は20分ほど。
- 気になる会社を3社選び、それぞれの「調達ラウンド」と「人数」を調べて書き出す。
- 3社をシード〜レイターに並べ替える。並べてみると、自分が無意識にどのフェーズに惹かれているかが見えます。
- 自分の型(開拓/仕組み化/作る/支える)と噛み合う会社に、応募の優先順位をつける。
6. フェーズは「移り変わる」— 入社後の視点
ここまでフェーズの見分け方を話してきましたが、忘れてはいけないことがひとつあります。フェーズは、固定ではなく移り変わる、ということです。あなたがアーリー期だと思って入った会社は、2年後にはミドル期になっているかもしれません。
6-1. フェーズが変わると、求められる力も変わる
これは、キャリアにとってチャンスでもあり、リスクでもあります。チャンスというのは、会社の成長とともに、あなた自身の役割も大きくなっていく可能性があること。シード期に何でも屋として入った人が、組織が育つにつれてマネージャーになる、というのはよくある道です。一方リスクというのは、フェーズが変わったときに、自分の型が合わなくなることがある点です。カオスが好きでシード期に入った人が、会社が整ってきたミドル期に「つまらなくなった」と感じる、というのも実際によく起きます。
6-2. 「今のフェーズ」と「これから」を両方見る
だから会社を選ぶときは、今のフェーズだけでなく、これからどのフェーズに向かうのかも一緒に見てください。1〜2年で急拡大しそうな会社なのか、じっくり伸びる会社なのか。自分が、その変化に乗りたいのか、安定した段階で力を出したいのか。フェーズの現在地と進行方向、この2つを重ねて見ると、入社後のミスマッチはさらに減らせます。フェーズは写真ではなく、動画で見るものだと考えてください。
7. フェーズ別・面接で確かめるべきこと
フェーズが読めるようになったら、次は面接でフェーズごとに確かめるべきことが変わる、という話をしておきます。同じ質問をどのフェーズの会社にもぶつけるのは、もったいない。段階に応じて、聞くべきことは違います。
7-1. シード〜アーリーで確かめること
初期フェーズでは、事業がまだ形を変える可能性があります。だからこそ、「今のプロダクトが想定通りいかなかったとき、どう舵を切るつもりか」を確かめてください。経営者がその問いにどれだけ具体的に答えられるかで、会社の生き残る力がある程度見えます。加えて、資金があと何ヶ月もつのか(ランウェイ)も、失礼を恐れず確認する価値があります。初期フェーズの安定性は、ここに集約されるからです。
7-2. ミドル〜レイターで確かめること
組織が育ったフェーズでは、確かめるべきは「自分の役割の輪郭」です。誰と、どこまでの裁量で働くのか。評価はどう決まるのか。すでに仕組みがある分、その仕組みが自分に合うかを見極める必要があります。初期フェーズでは会社の生存力を、後期フェーズでは自分の居場所の輪郭を確かめる。この違いを意識するだけで、面接の質問が的を射たものになり、入社後のギャップが減ります。フェーズを読む力は、会社選びだけでなく、面接の設計そのものを変えるのです。
8. まとめとして — 明日、何をするか
ここまで長く読んでいただきました。最後に、今日の話を1行に戻します。福岡のスタートアップキャリアは、勢いや運ではなく、順番と分解で歩けるということです。棚卸しをし、フェーズを見極め、自分の型に合う席を探す。この一つひとつは、決して難しい作業ではありません。ただ、誰かに教わらないと、なかなか気づけない順番でもあります。
僕たちポテンシャライトは、スタートアップ・ベンチャーの採用支援を本業としてきました。だからこそ、求人票の裏側にある「採用する側の本音」を、皆さんに翻訳して届けたいと思っています。これは特別なことではなく、僕らが日々の仕事の中で当たり前にやっていることを、記事という形に変えているだけです。
皆さん、いかがでしたでしょうか。フェーズという物差しを1本持つだけで、スタートアップの求人は急に読めるようになります。まずは適性診断で自分の型を確かめて、フェーズ・フィットの効いた会社選びを。福岡で、今日もいい一歩を。
よくある質問
Q. スタートアップのフェーズは、面接前でも分かりますか?
おおよそ分かります。使う物差しは調達ラウンド(シード/シリーズA/B/C)と社員数(10人・30人・100人)の2つです。プレスリリースや採用ページで確認でき、この2つでシード・アーリー・ミドル・レイターのどこかにほぼ当てはめられます。応募前に必ず確認するのがおすすめです。
Q. シード期のスタートアップは誰にでも向いていますか?
向いていません。シード期は裁量が最大な一方、年収が一時的に下がり、成果が出るまで時間がかかります。正解のない中で自分で決めて動ける人に向くフェーズで、整えるのが得意な人や安定を求める人は、アーリー〜ミドル以降のほうが噛み合うことが多いです。
Q. 安定を重視するなら、どのフェーズを選べばいいですか?
ミドル〜レイターが目安です。組織が育ち、守りの機能(人事・経理・法務・内部統制)の需要が大きくなる段階で、大企業で培った経験をそのまま活かせます。安定志向でスタートアップを選ぶのは後ろ向きではなく、型とフェーズの賢い噛み合わせです。
IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。
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フェーズの地図を持ったら、次は「自分がどのフェーズに向く型か」です。15問の適性診断で、あなたの型と狙い目のフェーズ・職域を言語化します。具体の会社選びは、採用支援が本業の運営元アドバイザーとの面談で。
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