福岡スタートアップの「非エンジニア」職種マップ — エンジニア以外の椅子はどこにあるか
- スタートアップの採用はエンジニアだけではなく、事業開発・セールス・CS・コーポレートなど非エンジニア職の椅子が数多くあります。
- The Model型の営業分業(マーケ・インサイドセールス・フィールドセールス・CS)は、前職の営業経験を翻訳して入りやすい入口です。
- 非エンジニア職は前職経験の『翻訳』が採否を分けます。運用した経験を仕組みを作った経験に言い換えられるかが鍵です。
「スタートアップに興味はあるんですけど、僕はエンジニアじゃないので、そもそも椅子がないですよね」——面談で、営業や事務の方からよく出る言葉です。
皆さんは、スタートアップに「エンジニア以外の椅子」がいくつあるか、挙げられますか。実はここを誤解している人がとても多い。今日は、非エンジニアの職種マップを、福岡の文脈で描き直します。
0. 「スタートアップ=エンジニアの世界」という誤解
たしかにプロダクトを作るのはエンジニアです。でも、作ったプロダクトを売り、使ってもらい、会社を回すのは、非エンジニアの仕事です。スタートアップが人数を増やすフェーズで、実はいちばん多く採用されるのは非エンジニア職です。ここが今回の隠れた主役。エンジニアだから入れる、ではなく、非エンジニアだからこそ入れる椅子がある、という話です。
1. 4つの椅子 — 非エンジニアの地図
1-1. 事業開発(BizDev)
新しい取引や座組みを0から作る仕事。営業の延長に見えて、実は「まだ無い商流を作る」役割です。前職で新規開拓やアライアンスの経験があれば、翻訳して入れます。
1-2. セールス(The Model型)
スタートアップの営業は、多くが分業化されています。マーケティング→インサイドセールス(内勤で商談を作る)→フィールドセールス(商談を締める)→カスタマーサクセス、という流れ。これを「The Model」と呼びます。前職が営業なら、どの工程に強いかで入口が選べます。
1-3. カスタマーサクセス(CS)
契約した顧客に使い続けてもらい、解約を防ぐ仕事。SaaSが増えたことで需要が急拡大した職種です。接客・サポート・ルート営業の経験が翻訳しやすい入口です。
1-4. コーポレート
人事・経理・労務・法務。急拡大する会社の土台を支える機能で、一人目人事・一人目経理といった希少ポジションが生まれます。大企業や地場企業の管理部門の経験が、そのまま活きます。
2. なぜ福岡で非エンジニア職が増えているのか
福岡は2014年の創業特区指定以降、地場のスタートアップが調達を重ねて人を増やす局面に入っています。プロダクトができた会社は、次に「売る・使ってもらう・支える」人を必要とします。だから、エンジニア採用の裏側で、非エンジニアの椅子が着実に増えている。僕の体感値で言うと、福岡のスタートアップ求人は、非エンジニア職の比率が思われているより高いです。
3. 採否を分けるのは「翻訳」
ここが本題です。非エンジニア職の採否は、前職の経験を「スタートアップの言葉」に翻訳できるかで決まります。
3-1. 翻訳の具体例
| 前職の言い方 | 翻訳後(効く言い方) |
|---|---|
| ルート営業をしていた | 既存顧客の解約を防ぎ、追加提案で売上を伸ばした(CSの素質) |
| 問い合わせ対応をしていた | 顧客の課題を拾い、プロダクト改善に橋渡しした(CS/BizDev) |
| 経理で月次を回していた | 属人的だった締め作業を仕組み化し、早期化した(コーポレート) |
3-2. よくある失敗
率直に言うと、多くの人が「運用していた」で止まってしまいます。スタートアップが欲しいのは、決まった運用を回す人ではなく、仕組みそのものを作れる人。同じ経験でも、「回した」ではなく「作った・変えた・早めた」に翻訳すると、値札が変わります。
4. 実務パート — 経験の翻訳シート
今日できることを置いておきます。所要時間は30分です。
- 前職の仕事を5つ書き出す。
- それぞれを「回した」ではなく「作った・変えた・早めた・伸ばした」の動詞で書き直す。
- その動詞に、人数・金額・期間のどれか1つの数字を添える。
この翻訳シートが、そのまま職務経歴書とスタートアップ面接の武器になります。エンジニアでないことは、スタートアップ転職のハンデではありません。翻訳さえできれば、椅子はちゃんとあります。
6. 職種は「入口」であって「終点」ではない
最後に、スタートアップの非エンジニア職を考えるうえで、大企業と決定的に違う点を話しておきます。それは、職種の境界が緩い、ということです。大企業では、営業として入ったら営業、経理として入ったら経理、と役割がはっきり分かれています。スタートアップでは、その境界がずっと曖昧です。
6-1. 役割は「染み出す」
これは、キャリアにとって大きな意味を持ちます。カスタマーサクセスとして入った人が、顧客の声を拾ううちにプロダクトの企画に関わるようになる。事業開発として入った人が、採用にも手を出して人事の基礎を作る。少人数だからこそ、自分の職種の外へ役割が「染み出して」いく。スタートアップでは、最初の職種は入口にすぎず、そこから自分の役割を広げていけるのです。
6-2. だから「入口」を狭く考えなくていい
この事実は、非エンジニアで転職を考える人にとって朗報です。「営業しか経験がないから営業しか無理」と狭く考える必要はありません。まず翻訳しやすい職種で入って、そこから興味のある領域に染み出していけばいい。僕が見てきた中でも、非エンジニアで入った人が、数年で事業の中核を担うようになった例は珍しくありません。入口の職種は、あなたのキャリアの終点を決めるものではないのです。
7. 職種別・最初の90日で信頼を作る
非エンジニアで入った後、最初の90日をどう過ごすかで、その後の居場所が決まります。少人数の会社では、早く信頼を得た人ほど、任される範囲が広がっていくからです。職種ごとに、最初にやるべきことを置いておきます。
7-1. セールス・CSは「数字と顧客の声」で示す
セールスやカスタマーサクセスで入ったなら、最初の90日は小さくても数字を出すこと、そして顧客の生の声を社内に持ち帰ることに集中してください。スタートアップは、顧客に近い人の言葉を重視します。現場で拾った一次情報を、プロダクトや経営に橋渡しできる人は、職種の枠を超えて頼りにされるようになります。
7-2. コーポレートは「不安を減らす」で示す
人事や経理などコーポレートで入ったなら、示すべきは派手な成果ではなく、「この人がいれば安心だ」という信頼です。曖昧だったルールを整え、滞っていた処理を早め、社員の不安を静かに減らしていく。守りの機能は、目立たないところで会社の土台を固めることそのものが価値です。急成長する会社ほど、この安心を作れる人を手放したくないと考えます。職種が何であれ、最初の90日で「この人がいると助かる」を作れれば、そこからキャリアは自然に広がっていきます。
8. まとめとして — 明日、何をするか
ここまで長く読んでいただきました。最後に、今日の話を1行に戻します。福岡のスタートアップキャリアは、勢いや運ではなく、順番と分解で歩けるということです。棚卸しをし、フェーズを見極め、自分の型に合う席を探す。この一つひとつは、決して難しい作業ではありません。ただ、誰かに教わらないと、なかなか気づけない順番でもあります。
僕たちポテンシャライトは、スタートアップ・ベンチャーの採用支援を本業としてきました。だからこそ、求人票の裏側にある「採用する側の本音」を、皆さんに翻訳して届けたいと思っています。これは特別なことではなく、僕らが日々の仕事の中で当たり前にやっていることを、記事という形に変えているだけです。
皆さん、いかがでしたでしょうか。まずは適性診断で、自分がどの椅子に向く型かを確かめてみてください。福岡で、今日もいい一歩を。
よくある質問
Q. エンジニアでなくてもスタートアップに転職できますか?
できます。スタートアップは事業開発・セールス・カスタマーサクセス・コーポレートなど非エンジニアの椅子が数多くあり、人数を増やすフェーズではむしろ非エンジニア職の採用が多くなります。特に福岡は地場スタートアップの成長局面で、非エンジニア求人の比率が高い傾向があります。
Q. 営業経験はスタートアップでどう活きますか?
The Model型の分業に翻訳して活かせます。スタートアップの営業はマーケ・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスに分かれており、前職の営業のどの工程が得意かで入口を選べます。ルート営業なら解約防止と追加提案という形でCSに翻訳しやすいです。
Q. 前職の経験をどう伝えれば非エンジニア職で評価されますか?
『運用した』ではなく『作った・変えた・早めた・伸ばした』に翻訳するのが鍵です。スタートアップは決まった運用を回す人より、仕組みそのものを作れる人を求めます。同じ経験でも動詞を変え、人数・金額・期間の数字を添えると、職務経歴書と面接での評価が大きく変わります。
IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。
自分の経験が、どの椅子に翻訳できるかを知る。
非エンジニアの椅子は多い一方、前職経験の翻訳が採否を分けます。15問の適性診断で、あなたの型がどの職種に向くか、狙い目の職域まで言語化しましょう。翻訳の個別相談は、採用支援が本業の運営元アドバイザーと一緒に。
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