選考対策2026-07-21監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

福岡スタートアップに通る職務経歴書 — 大企業フォーマットが刺さらない理由

この記事の要点

「職務経歴書、真面目に書いたのに全然通らないんです」

先日、東京の大企業からの転職を考えている方から、こんな相談を受けました。丁寧に作り込んだ職務経歴書を持ってきてくれたのですが、正直に言うと、僕はその場で「これは今のままだと福岡のスタートアップには届かないだろうな」と感じました。悪い経歴書ではありません。むしろ大企業の人事が読めば高評価をつけるタイプの、完成度の高い書類でした。ですが、スタートアップの読み手が知りたい情報がほとんど載っていなかったんです。結論から言うと、大企業向けの職務経歴書とスタートアップ向けの職務経歴書は、そもそも「見られている観点」が違います。同じ経歴を書いていても、切り出し方と粒度を変えるだけで通過率は変わってくると、支援の現場では体感しています。

1. なぜ大企業の職務経歴書はスタートアップで刺さらないのか

大企業の職務経歴書は、所属した組織の大きさやプロジェクトの規模、社内での肩書きの変遷を丁寧に書き込む形式が多いと感じています。それ自体は間違いではなく、大企業の人事担当者は「どの階層でどの規模の意思決定に関与したか」を見るために、その情報を必要としているからです。一方で、福岡のスタートアップは社員数10〜50人規模のフェーズが多く、専任の人事担当者がいないケースも珍しくありません。書類を読むのは現場のマネージャーや経営者本人であることが多く、彼らが知りたいのは「この人が来週から何をしてくれるのか」という、もっと具体的で近い未来の話です。福岡市は2012年にスタートアップ都市宣言を行い、その後グローバル創業・雇用創出特区の指定を受けて創業支援の仕組みを整えてきましたが、そこで生まれている企業の多くは意思決定のレイヤーが薄く、経歴書の読み手と実際に一緒に働く人がほぼ同じというケースが目立ちます。だからこそ、組織の大きさよりも「あなたが具体的に何を決めて、何を動かしたか」が優先して読まれるのだと考えています。大企業の経歴書をそのまま出すと、立派な経歴に見える一方で、読み手が知りたい「実行の粒度」が抜け落ちてしまい、結果として通過率が下がるのだと僕は理解しています。

2. スタートアップ人事が実際に見ている3つの観点

支援の現場で見ていると、福岡のスタートアップの読み手が職務経歴書から探している観点は、おおよそ3つに整理できると考えています。1つ目は成果の再現性です。「その成果は今回だけの偶然か、他の環境でも再現できる打ち手だったのか」という視点で、担当した施策の中身が具体的に書かれているかを見ています。2つ目は意思決定の当事者性です。「担当しました」という表現だけでは、指示を受けて作業したのか、自分で方針を決めたのかが分かりません。役割が「参加」なのか「主導」なのかは、スタートアップの選考ではかなり重視されている印象があります。3つ目は巻き込み力です。一人で完結した仕事なのか、他部署や社外の人を動かして進めた仕事なのかという点です。スタートアップは人手が薄いため、周囲を巻き込んで進められる人材かどうかは、入社後の立ち上がりに直結すると考えられているのだと思います。この3つの観点は、大企業の経歴書ではあまり明示的に書かれない部分で、逆に言えばここを補うだけで同じ経歴でも評価が変わりやすい箇所だと僕は感じています。

3. 型で比較する — 大企業版とスタートアップ版の職務経歴書

言葉で説明しただけでは分かりづらいので、独自ガイドとして整理した型の違いを表にまとめます。あくまで独自ガイドの目安値としての整理であり、企業ごとの個別事情はこの限りではありません。

観点大企業向けの型スタートアップ向けの型
書き出し所属組織・部署名・在籍期間から始める直近の成果や役割から始める
実績の書き方プロジェクト概要と体制図中心自分の意思決定と行動を主語にして書く
数字の使い方売上規模や予算規模を単独で提示母集合と比較対象をセットで提示
使う動詞担当した・関与した・従事した決めた・巻き込んだ・仕組みにした
ページ数の目安3〜5ページ1〜2ページ

この比較で一番差が出やすいのは「数字の使い方」だと感じています。大企業の書類は組織の規模を示すために数字を単独で出すことが多いのですが、スタートアップの読み手には「それは何人中の何%か」「前年や隣接職種と比べてどうなのか」が伝わらないと、数字の重みが判断できません。数字を出すときは必ず母集合と比較対象を添えるという意識だけで、印象は大きく変わると考えています。

4. 職種別に効く「一行の書き方」

職種によって、経歴書で伝えるべき一行の中身は変わってきます。エンジニアであれば「担当した機能」よりも「その機能をどの技術選定で、どんな制約の中で実現したか」を書くほうが、技術力の再現性が伝わりやすいと考えています。セールスであれば「売上120%達成」だけでは母集合が分からず評価しづらいので、「既存顧客50社に対してアップセル提案を行い、担当エリア内の目安値として契約単価を前年同期比で1.3倍に伸ばした」というように、何の数字で何と比較したかまで書くことをおすすめしています。バックオフィスや人事のように数字化しづらい職種の場合は、「対応件数がどう変わったか」「仕組み化によって処理時間がどれだけ短縮されたか」を、担当範囲と比較時点をセットで書くと伝わりやすくなります。マーケティング職であれば、施策の規模よりも「どの意思決定を自分がしたのか」を明示することが重要です。例えば「広告運用を担当」ではなく、「月間予算の目安として数十万円規模のキャンペーンで、配信媒体の選定と予算配分を自分で決め、CPAを前月比で改善した」というように、担当範囲・意思決定・比較対象の3点を一行に詰め込む書き方が、スタートアップの読み手には評価されやすいと僕は感じています。

5. よくある失敗とその対処

実際に相談を受ける中で、繰り返し見かける失敗パターンがあります。1つ目は、会社の規模や知名度を前面に出してしまうことです。大企業出身であること自体は経歴として悪くありませんが、それだけを強調すると「その会社だからできたのでは」と受け取られやすく、個人の再現性が伝わりません。2つ目は、「担当した」で終わる動詞の多用です。担当した範囲は分かっても、自分が何を決めたのかが読み手に伝わらず、当事者性が薄く見えてしまいます。3つ目は、数字だけを書いて母集合や比較対象を省略してしまうことです。前の章でも触れましたが、これが最も評価を下げやすい失敗だと感じています。4つ目は、大企業の書式のまま3〜5ページの詳細版を出してしまうことです。読み手が数分で読む前提に合わず、要点が埋もれてしまいます。5つ目は、転職サイトのテンプレートをそのまま使ってしまうことです。テンプレートは型としては便利ですが、職種や企業フェーズに合わせて粒度を調整しないと、どの経歴書も同じように見えてしまい、印象に残りにくくなります。以前支援した方の例では、大企業の社内制度名やプロジェクトの正式名称をそのまま書いていたため、面談の場で「それは何の業務ですか」と聞かれてしまい、説明に時間を使ってしまったケースがありました。一般名に翻訳して書き直したところ、次の面談ではその部分の説明が不要になり、成果の話に時間を使えるようになったと聞いています。こうした小さな書き直しの積み重ねが、選考の通過率に影響していると僕は考えています。

6. 今日からできる実務アクション(5ステップ)

ここまでの内容を、実際に手を動かせる手順に落とし込みます。1つ目は、直近3年の成果を3つだけ選び、それぞれに「何の数字か」「何と比較した数字か」を必ず添えて書き出すことです。数字が出せない職種の場合は、対応件数や処理時間などの変化を代わりに使います。2つ目は、その3つの成果それぞれに「自分が決めたことは何か」を1行足すことです。指示を受けて実行しただけの部分と、自分の判断が入った部分を意識的に分けて書きます。3つ目は、社内固有のプロジェクト名や制度名を一般名に翻訳することです。社外の人が読んでも業務内容が想像できる言葉に置き換えます。4つ目は、全体を1〜2ページに収めることです。削る作業は苦しいですが、読み手の時間を前提に、伝えたい優先順位の高いものだけを残します。5つ目は、現職の同僚ではなく、スタートアップで働いている知人や、支援機関の人に一度読んでもらうことです。社内の視点では気づけない「伝わらない箇所」は、外の視点でないと見つけにくいと感じています。この5ステップは、独自ガイドの目安値としては半日程度で一通り実施できる内容だと考えています。まずは1つ目のステップだけでも、今日中に手を動かしてみてください。

7.(結論)

皆さんいかがでしたでしょうか。大企業向けの職務経歴書とスタートアップ向けの職務経歴書は、優劣の話ではなく、そもそも読み手が見ている観点が違うという話だと僕は考えています。成果の再現性、意思決定の当事者性、巻き込み力の3つを意識して書き直すだけで、同じ経歴でも伝わり方は変わってきます。数字は母集合と比較対象をセットで添えること、社内用語は一般名に翻訳すること、この2つだけでも今日から実践できる小さな一歩です。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 福岡のスタートアップ向け職務経歴書は何ページが目安ですか

独自ガイドの目安値としては1〜2ページに収めるのが読みやすいと考えています。大企業選考で使う3〜5ページの詳細版をそのまま出すと、経営者やマネージャーが数分で読む前提に合わず、要点が伝わりにくくなる傾向があります。実績は絞って、代わりに数字の母集合と比較対象を明記するほうが評価されやすいと僕は感じています。

Q. 数字の実績がない職種でも職務経歴書で評価されますか

数字がなくても評価されると考えています。バックオフィスや人事などは売上のような数字が出づらい職種ですが、「何を仕組み化したか」「対応件数や処理時間がどう変わったか」を母集合つきで書けば十分に伝わります。数字がない場合は、意思決定の当事者性(自分が決めたことは何か)を1行加えるだけでも評価は変わると体感しています。

Q. 大企業の社内用語や制度名は職務経歴書に書いていいですか

基本的には一般名に翻訳して書くべきだと考えています。社内独自のプロジェクト名や等級名は、10〜50人規模のスタートアップの読み手には伝わらないことが多く、翻訳しないまま出すと業務内容が想像できず評価が下がりやすい傾向があります。誰が読んでも役割と成果が分かる言葉に置き換えるのが安全だと僕は思っています。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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